ここではモノが感じる、人とヒト、人とモノのお話を紹介します。
和歌山県の山中にある熊野本宮。
古代から中世にかけて本宮、新宮、那智の熊野三山は、上皇・貴族から庶民に至るまで、多くの人々が参詣する地域でした。昔は人影の少ない長い険しい山道を越えながら、寒い日でも水垢離(みずごり)をして心身を浄め、ひたすら熊野の神々や仏の救いを念じながら熊野三山へと歩いていく、祈りの道だったそうです。今では、世界遺産に登録された事もあり、綺麗な大自然の景観の中を、整備された道と多くの観光客が歩いており、綺麗な自然に感動する気持ちと、心地良く澄んだ空気に癒やされる気持ちになる反面、観光地になったことで少しの違和感と残念な気持ちが入り混じったのが僕の熊野に対する第一印象でした。
熊野といえば、本宮大社や川湯などが有名な場所で、山に囲まれたこの地域に昔から多くの人が足を運びました。
お正月には本宮大社には何万人もの人達が、今年の夢や目標、願いを込めてお参りに来るそうです。本宮大社は、山間にある長い階段を上ると見えてきて、そんなに大きくない建物ですが、見たときの存在感は圧倒されるものを感じました。昔ながらの建物が3棟ほど立ち並び、その一つ一つに心を込めてお参りをする。。そんな些細な行動ですが、昨年の想いから心が一新され、また今年も頑張ろうという気持ちになりました。
本宮大社の横には熊野古道が続いており少し歩いてみると、周りは木々ばかりで、広い山の中を彷徨っているような気持ちになり、今まで悩み考えていた事が凄く小さく思えるように感じました。それは本宮大社で祈った事を自分なりに考え、具体化するための時間を、山がくれているように感じる道でした。
その後は、熊野川の支流、大塔川の河原を掘ると湧き上がるという不思議な温泉、川湯に行きました。冬季は仙人風呂という大きな露天風呂が作られて、老若男女関係なく多くの人達が、山間の澄んだ空気を吸いながら気持ち良さそうに温泉に入って癒やされていました。僕達は水着を忘れ入ることが出来なかったのですが、仙人風呂で足湯をしながら、横で温泉と川の境目で遊んでいる子供達を見ていると、日頃の喧騒を忘れ、心も身体も癒やされたように思います。
神秘的で癒やしを感じ、それでいて本当の自分に向き合える場所と時間をくれるところ・・・熊野本宮。
開発が進み、利便性が良くなった事に対する喜びと、それによっての違和感と残念な気持ち。。こんな矛盾した二つの気持ちを抱きつつも、五感では確認できない神様の存在を感じることが出来ました。そして、未来に向けて目標と願いを祈りながら歩くこの道を、次の世代の人達にも伝えていきたいと思う。そんな神秘的なモノを感じれる場所でした。