ここではモノが感じる、人とヒト、人とモノのお話を紹介します。
京都市左京区鹿々谷にあるカフェ、GOSPEL(旧名:OTENBA KIKI)。
何年も前に、僕が人に聞いてこの場所に行った時はまだ”OTENBA KIKI ”と言う名前でした。そこは僕の中での大切な場所のひとつです。
その当時から、建物は木造の洋風建築の英国風洋館で、大きな家の角には六角形の塔がついており、白い壁は蔓や葉が覆い、窓からは白いレースのカーテンが風に吹かれてゆれている・・・哲学の道の近くにある閑静な住宅街の中で、その建物は一際存在感のある建物でした。
調べたところ、個人邸宅として1982年に建てられたそうです。
その家の白い扉を開けて、木の階段を上ると高い天井の広々とした空間が広がっていました。その広々とした空間には、たくさんある窓から差し込む光が、木で作られたアンティークな素敵な家具を優しく照らし、流れるジャズの音が心地よく入ってくる風に乗って、より一層その空間を優しく包んでいるように感じました。棚には、約何千枚はあるだろうと思われるレコードがしまわれ、またテーブルには無造作に鈴やライトなどが置かれており、その一つ一つを見ているとこの店のオーナーの、好みとこだわりがひしひしと伝わってきました。
僕が行った時に来ていた客様は、ご年配のマダム風の方が多く、丸テーブルの真ん中に果物を置いて、クレパスで絵を描いている人たちや、ただただゆっくりコーヒーを味わっている方。お子様連れで来ているご夫婦や僕達のように友達と来ている人達。その広い空間にあるテーブルには、それぞれの時間と空気が流れ、又どれも優しく居心地の良い雰囲気で、何時間でも窓から入ってくる気持ちの良い光と風を感じながら本でも読んでいたいと思うような場所でした。
その”OTENBA KIKI”も息子さんの代になり、名前も”GOSPEL”と改名したと聞き、少し寂しい気持ちになりました。それは、僕にとってあまりに心地良すぎた記憶の中の空間が、無くなってしまったように感じたからだと思います。しかし最近になってどうしても確かめたく行ってみると、そこには何年も前に感じた心地よい空間が広がっていました。あの時と家具や配置は違うし、マダムのオーナーの姿も居なくなっていたのですが、あの時感じた優しく、居心地の良い時間と空気を感じれました。
これからもふらりと立ち寄るであろうこの場所が、いつまでも変わらずにいて欲しいと僕は願っています。
あの時も今も変わらず
僕にとって大切なモノ”GOSPEL”。
また次も、あの時のしっとりとした美味しいスコーンを食べながら、心地よい時間を過ごしたいと思います。
所在地 京都市左京区鹿々谷
鹿々谷通をバス停銀閣寺前から南へ100m程